23

23歳だった。誕生日だった。その日は冷たく光る雨が降って、僕は前日から遠い海の名前のお酒を飲んでいた。CDプレーヤーの冷静な緑色のデジタル文字が00:00を示し、僕は自分の年齢が変わったと知った。00:01に間宮から「誕生日おめでとう。これからもよ…

夜と、月

あちこちに報知器が置かれていて、街では大きな物語が流れている。私はここにいないのに、死体は道路に転がっていて、それを避けて歩く限り私は存在しないと、標識に書かれていて、私はメモリスティックを口に咥えて誰も読まないラノベ小説を運んでいるみた…

川辺

心の底を、流れる川で、昨日は指を切ってあげた。 山は、あたたかいが、黒い。しびれるような懐かしさは、ここでは青い、青くて、くるまっている。 ギターは静かな楽器です、がやや胴などは確かすぎるので、譜面台には鉛筆で愛情の、こぼれた文字が書き連ね…

愛着心の余りある感情に、時計の枝を噛む、キーボードは、固くて、かちゃかちゃしているのがいいです、待って欲しい!、って、ビーカーの赤い目盛りに声を掛けるみたいに、舐めていく感情に落とし舟の帆が立っていくし、背中合わせに夕陽の魔法を詠み合って…

別離(朝)

バイバイ、夢の人たち、私の呼吸器は舟のように傾いでいる、稀に対応する機首があっても、理性だけが切れ切れに垂直で、 歴程に鳴る日ずく毎、夢に似し、且つはまた、柔軟な寝息に、箱舟の薹が立つ、囲炉裏の色に、 バイバイ、聞こえない舍密たち、喉奥で故…

氷が水に変わる場所

1.僕理沙は冷たい拡がりを纏っているみたいだった。 関わり合わない限り人間同士は、いつまで経っても、別々の宇宙人としての、遠い、遠い隣人同士なのだと思う。一度人と深く関わり合う決心をしてしまったら、広漠な世界へと続くはずだった自分の部屋のド…

僕では無いかも知れない(抄)

*「どうせみんな死ぬんです」 7は言った。ベッドの縁で足を組み替えて、それから目配せをしたので僕は灰皿に手を伸ばして、ベッド脇のテーブルに置いた。ラジオからは「スプーン・エイジ」というタイトルの黄色っぽいような、エレキギターを高音を多用した…

雨の日

喫煙所には灰皿が二つ置かれているのに、地面には吸い殻が散らばっていた。大分前から管理されてないらしく、灰皿は吸い殻でいっぱいになっていた。そこは展望台のようになっていて、天井がなく、見るべきものと言えば空くらいなのに、今は細かい雨が降って…

軽くハイ、震える

何だかここ数日また、手の震えがひどくなってきてる。去年は震えが止まらなくて、そのまま倒れてしまったりもしたけど、今年は大丈夫だったのにな。これはリチウムのせいだと思うけれど、もしかしたら頭の神経がいかれてるのかも知れない。最近では首の震え…

街の底

カレンダーにはドット線。青い雪。 終着点は今日 産まれ付いた月、日の中にいくつもの光源、 いくつもの番号、いくつもの残照、 嫌悪感によって私は人生の収束点としての今と 滲んだ並行関係を保っている 裏切りに鈍感になっていく。 皮膚の裂け目へと連なる…

ミミ

後ろを向かないで ミミあなたの遠い故郷が待っているそこでは砂場でシグナルを送り合うかつての街の信号機は、青くなって唾液のように揺れている天国があるとするなら、それはいつも定員が一人なんだよだから、だから私たちは産まれたんだ私の居場所が伝わる…

きぐるみのモノローグ

「えへへ、それでね「肋骨を開くと、クリスタルドームみたいになってるの「果てなく消えていくための扉があるというわけ「この世界は全て心の出口「なら入り口は「それは私だけ「私だけの秘密「触れたければ、「手を入れてみればいい「私の肋骨は扉になって…